Dornröschen

昨日、自分達の初演が終わり
まさに言葉通り晴れ晴れとした気持ち
初演が終えたからと言って、これで終わりではないし
むしろ、これが始まりなのだけど
今はただこの達成感や満足感に浸っていたい


以前書いた様に、常に不安を感じていたけれど
最後の1週間はどこか気が抜けたと言うか
焦ったところで準備の時間が増えるわけではないし
出来る限りの事は尽くしてきた
クリエーション時からずっと全力でやってきた
というふうに、諦めとは少し違うのだけど
余計な力が抜けた気がした
それでも緊張は日に日に増していく一方で
前日の夜は早く寝ようと床に就くも胸がざわつき始めて
しばらくしたらまた落ち着いて、その繰り返しで
なかなか寝ようにも寝られなくて
けれど、いつの間にか眠り始めていた
朝はセットした目覚ましよりも早く目が覚めて
深く眠れたから良かったものの
目覚めの感じから緊張と興奮を実感した


本番直前や最中での緊張はあるけれど
こんなに長い時間、緊張状態なのは自分でも驚き
きっと物語の振付作品で主演だと考えてしまうからではと
先日、いばら姫役の葵ちゃんと話していた
アブストラクトな作品でソロやデュエットがあっても
ここまでのプレッシャーを感じる事はなかった
やっぱり物語がある事で、シーンの展開は
キャラクター達の関係性や心境に沿って展開される
観客も当然キャラクター達を目で追いかけるし
そうする事で物語が観客に伝わる
だから、自分の演技がとても重要で
役柄やシーンその場その場での表現が作品の要になる
大役だと思ってしまって、プレッシャーを感じる
物語を伝えられるかどうかは自分次第だと責任も感じる
それでこんなに緊張してしまうんだ


考えだしたら止まらないし
でも、そこまでの責任を感じる必要もないかなと
役柄には自分なりに向き合ってきたはずだし
自分が理解したものを舞台で表現する事が出来れば
それが結果、物語を伝える事になっているだろうと思えた
プレッシャーや責任を今更、改めて感じる必要はないんだと
ここでもまたひとつ余計な力を抜く事が出来て
本番直前も敢えて見直す部分はないかなとも思えた


結局、3週間前に舞台稽古を一度したのみだったから
立ち位置や舞台装置の位置などの確認をして
後はもう呼吸を整えて落ち着かせて
特に大きく動かず最初から最後までをなぞるのみにした
みんなが次々に成功を祈りに来てくれて
王と王妃担当アシスタントのウヴェが声をかけて来た時は
早過ぎるけど、目頭が熱くなってしまった
不安とか心細さとか色々が混ざっていた気がする
それでも始まるのが楽しみで仕方なかった気持ちもあるし
たくさんの思いが入り交じっていた


序曲が始まって胸がざわつき始めたけれど
序曲が終わるにつれて収まってきて
踊り始める時には、すっかり落ち着く事が出来た
そのおかげで身体も強ばらずに動かせて
後はそのまま、音楽と踊りを楽しんでいく事が出来た
その場その場の気持ちの在り方とか
特に考えずに自然と気持ちが生まれてきて
演技なのだけど、自分自身でいられた
舞台上に作られた世界に
そこの人間として生きていると言うか
聞こえは大袈裟だけど、そんな感じだった


リハーサルも密に入っていたから
作品に対しての体力も大分ついてきていたし
入り込めていたからか、苦でもなかった
呼吸をする事だけは心がけて
後は全て起こるままに、自然となる様になると気張らずに


パートナーである王を踊ったマーティンとは
くるみ割り人形Merry Christmas?』でもクララの両親、夫婦役だった
そのおかげか、一緒に踊る事に慣れている方で安心出来た
公私共に基本的に私はあまり心を開かないと言うか
人当たりは良くても本当に信頼を置くのに時間がかかるから
今回の様な作品で、もし初めて踊る相手とだったら
その相手と踊る事に慣らして、開いていくのに
もっと時間がかかっていたと思う
今回そういう部分はクリアしていたから
日々一緒に作っていく事だけに集中出来て良かった
特に揉める事もなく、揉めそうな雰囲気があったとしても
一緒に踊る相手だから対立したくなかったし
それよりも一緒に解決していく事で
より作品を自分達のものにしていけたと思う
だから常に穏やかで、励まし合って支え合っていた感じ
正直、私はシーズンの始め頃は
いつもふざけている彼をけむたがっていたのだけど
こうして数ヶ月一緒に頑張っていると
情愛とまではいかずとも、親しみが湧いて
作品の中では、やっぱり愛おしいとさえ思えた
王妃が愛する夫である王
演技と言うのは不思議だなと思った


葵ちゃんに対してもそう
いつも一緒に過ごして励まし合って
オシャベリしているけれど
作品の中では母と娘
私は母親になった事はまだないけれど
小さい子供を可愛いなと思う気持ちはある
小柄で少女役を演じる葵ちゃんが本当に少女に見えて
自分がもし母親だったら、どんなふうに微笑みかけるのか
問いつめられたら、どんなふうに無言で封じるのか
葵ちゃんが娘として接してくるから
自然とそういうふうに出来ていたのかもしれない


物語である『Dornröschen』は踊りよりも
そういったそれぞれの役柄の感情の要素が強くて
今までに経験のない過程が多かった
まだまだ出していかなければいけないし
シーンをより理解して、明確に表していかないといけない
学ぶものが日々たくさんあって
きっと毎回発見と新しい体験の連続だろうな
飽きる事がないだろうな
それがあるから成長し続ける事が出来るなと実感し
無限に続くものがある事に安心する


いつでも泣ける涙腺の弱り切っている私は
カーテンコールも済んで
終演を実感して、みんなと抱き合ったりしたら
もう泣き出して止まらないんじゃないかと思っていたけれど
涙は出る事もなく、ただ満ち足りた気分で心地良かった
みんなの言葉や感想が疲れも吹き飛ばしてくれて
嬉しくてたまらない、と言うよりは、本当に満足だった
ただただ穏やかな気持ちだった
でも、あまり静かにしていてもなと思って
少し意識してはしゃいでしまった
楽屋に戻って、いよいよ本当に喜んだ


本当にみんなに支えてもらった
励ましてもらった
本当に感謝の気持ちでいっぱいで
だから、次回も良い舞台になる様に頑張りたい
ありがとう