目が覚めて 時計を見ると 既に8時半
しまった
もっと早く起きて 手伝うつもりだったのに…
最後の夜だからって言って 昨夜は私の大きいベッドで一緒に寝たんだ
オシャベリして 作ったフォトアルバム一緒に眺めて…
どこにいるのかな
あ 洗面所か…
急いで着替えて台所に行くと エスプレッソが作ってある
よく見ると マルコは既に朝食摂り終えてる
しまった
最後くらい一緒にゆっくり食べれば良かった
っていうか 何か温かいもの作ってあげれば良かった
でも 彼の事だから朝食は食べないか
洗面所から出てきたマルコは髪も髭も整えて 身支度が終わってる
引き出しとかに忘れ物ないか見ておこう
忘れ物はなさそうだな
リビングに出てる物で最後だ
エルミオーネ*1に全部入るかな
エレベーターで降りて 駐車場に入る
いつもと変わらない行動だけど 2人の手は荷物でいっぱい
へんなの
運転席以外は荷物でいっぱい
荷物の詰め方を変えて 整理して 一旦家に入って 2人で一息入れる
大家の事や一緒に買った家具の清算 鍵や書類の交換をする
アニータ*2は私が持って行くから
なんで こんな気分の時に金勘定とかしなきゃいけないんだよ
一通り 家の中を見回して 最後の確認
壁に絵が残ってる
クリムトの『The Kiss』
それを剥がして いよいよ出発の時間がやってくる
一緒に下まで降りる
へんなの
見送りすることなんて今までなかったのに
でも 今生の別れじゃあるまいし こんなに深刻にならなくても…
どうして こんなに目頭が熱くなるの
マルコが抱きしめてくれて
それまで抑えていたのが 一気に崩壊
どっと涙が出てくる
止まらない
こんなふうに悲しめるくらい 一緒に過ごしたって事だよ
私が会いに行けばいいんだし 泣くの止めて 送り出してあげなきゃ
マルコの顔もグチャグチャ
あはは
真っ赤な顔しちゃって
私も同じか
2人してブッサイク
エルミオーネに乗ろうとしては 戻ってくるマルコ
これ以上 お互いのコート濡らし合ってどうするのさ
もういいって
実家に着くの遅くなっちゃうから行きなよ
私は大丈夫だからさ
エルミオーネにエンジンがかかって 少しずつ遠ざかって行く
加速されて どんどん見えなくなって行く
またね
家に入ると クリムトのない壁のあるリビングルーム
見慣れたはずの部屋が違う景色に見える
妙に広く感じる
私はひとり
マルコが私の家に来るまで 私はひとりで住んでたのに…
彼が私の家に来てから 兄妹のようにベッド並べて同じ部屋で寝てた
しばらくして どうせなら引っ越そうと 今の家を見つけて 一緒に住み始めた
1年と2ヶ月
もし前の家のままなら 元々ひとりだったのに戻るだけだから こんなに感じなかっただろうけど
今の家は 一緒に住むつもりで探して選んで暮らし始めた家だから
そこにひとりでいるのは少しキツい
家族みたいだった
このレッジォ・エミリアで 良い所も悪い所もお互い分かってる唯一の人だった
マルコが来てから 楽しかった
ありがとう

「Sono triste che sia tutto finito」全てが終わったかの様に悲しい

実家に着いたマルコが送ってきたメッセージ
私も悲しい
でも 何も終わってないから

*1:マルコの車の名前:原案は『ハリーポッター』の登場人物 ハーマイオニーのイタリア語読み

*2:乾燥機の名前